「おい、きんぎょ注意報!の後、変なの始まってなかった?」
「見た見た、聖闘士星矢みたいな女のやつな!」
・・・月曜日の朝、学校でそんなやり取りが、あったような、なかったような。
1992年3月、『美少女戦士セーラームーン』第1話が初めて世に出たときのことだ。
まだ幼かった僕達は、そのとき、自分が歴史を目撃していたのだとは、気づいていなかった。
その「聖闘士星矢みたいな女」は、後に世に知らぬ者のない世界一の少女アニメになったのだ。
その「歴史的第一歩」がこの「泣き虫うさぎの華麗なる変身」。
物語は、主人公「月野うさぎ」が寝坊するところから始まる。
とにかくアレだ、月野うさぎは平凡以下のダメ少女なのだ。
独白で入る「ちょっとおっちょこちょいで泣き虫」は、今後幾度となく繰り返される。
早い話が、のび太である。
寝過ごした!と慌てるうさぎ。
ママ(育子)に悪態をつかれつつ、大急ぎで学校へ行くが、道中でいじめられてる猫を見つける。
もちろんルナ。
ありがちな「人語を解する小動物枠」だ。
このときの「三日月ハゲ」よばわり、放送当時の記憶にあるなぁ・・・。
んで、遅刻して立たされる。
こんなところものび太だな・・・。
ところでこのシーンで、セーラームーン名物の「皮膚表面であるか否かにかかわらず出現する、巨大な汗の水滴」が登場する。
この「セラムン汗」も、当時は物珍しい演出だった。
学校のシーンではうさぎを取り巻くキャラクターが一度に紹介される。
うさぎの平凡な友達である「なるちゃん」。
三枚目キャラだが成績優秀な「海野くん」。
海野くんのメガネはどうみても『キテレツ大百科』の勉三さんじゃね?
あと、なると海野が解説する「セーラーV」。
ここまで僅か5分(OP込)。
すごい驅け足だ・・・。
- このひと達が「悪の組織」なんですよ。
- このひとがいわゆる「悪の総統」ですよ。
- このひとがいわゆる「悪の幹部」ですよ。
ということを、簡潔に視聴者に紹介してくれる。
ちなみにクイン・ベリルがこねこねしている水晶玉みたいなものの機能は、後に明らかになる。
さらに場面は変わり、なるちゃんの店「OSA・P」。
宝石のバーゲンにやってきたうさぎとなる。
ここでやはり注目せざるを得ないのは、明らかに浮いたデブのモブババア。
これ執筆時、もうかなり先まで視聴しているけど、このデブモブババアほど印象に残るモブは、まだない。
なるママは張り切ってバーゲンを盛り上げているが、このひとこそジェダイトの差し金、妖魔モルガであった。
うさぎに50万円のダイヤを3万円に値下げするというニセママ。
怪しすぎる値下げ・・・妖魔としては店の利益とかどうでもいいからね。
そしてそれを聞きつけて割り込んでくるデブモブババア。
ウゼェ!
値下げ宣言のため大騒ぎになった店をうさぎは一旦出ることにする。
そして今日のテストを取り出して、クシャクシャして、ポイして・・・。
「痛いじゃないか、お団子頭」
お・・・?
きた!
地場衛だ、きたー・・・ダセェ!
なんだこの、サイズの合ってないターミネーターみたいなサングラスは。
ともかく、序盤のお約束である「うさぎと衛の険悪なやりとり」、記念すべき第1回である。
衛と別れたうさぎはゲームセンター「クラウン」でゲーム化されたセーラーVに羨望のため息をつき、ルナが密かにその姿を見つめ、呟く。
「月野うさぎ、とうとう見つけたわよ」
ここでアイキャッチ。
男の人がみんなで掛け声「セーラームーン!」。
これもダサい。
当時もそう思った記憶がある。
Bパートは自宅に帰ったうさぎが育子にドヤされるところから始まる。
家を叩き出されたうさぎに弟進悟が登場し、追い討ちをかける。
その頃OSA・Pでは、デブモブババアがまだいた。
商品の宝石にエナジーを吸われ、客が倒れていく。
「あー、力が抜ける」
うるせぇデブ、殺すぞ。
そして、おや・・・?
なるママの、ようすが・・・。
というところで、また場面は月野家へ。
うさぎの自室にルナ登場。
猫が喋ったことに怯えまくるうさぎに対し、ルナはブローチを出す。
ダメ主人公の前に喋る猫が現れ、不思議な道具を出す・・・。
そう考えるとドラえもんだよな、この展開。
ルナはうさぎが選ばれた戦士であること、プリンセスを探し出してほしいことを説明。
その背景に『セーラーV特集』っていう本があるんやけど・・・?
うさぎ、学校でなるちゃんに、セーラーVなんて知らない、みたいなことを言ってなかったか?
ともかくルナはうさぎに変身させる。
「ムーン・プリズムパワー!メイクアップ!」
うおおおお!これだよ、これ!
テンションが上がる。
なんというか「セーラームーン見てます!」って感じを堪能できるね、初代変身バンク。
初めての変身に戸惑ううさぎ。
決めポーズのまま「えっ・・・?」ってなってるところは放送当時の記憶にある。
すぐさま、なるちゃんが助けを呼ぶ声が、お団子の赤いのを通して聞こえてくる。
この赤いのの効果その1である。
今後この効果使うところあるか・・・?
全然関係ないけど、ドラえもんの「魔女っ子しずちゃん」に出てきた「タスケテ帽」も似たような効果のある道具だよね。
あとさらに関係ないけど、ルナの声は「のび太の宇宙小戦争」のパピくんだよね。
慣れるまではしばらく、パピが喋ってるようにしか聞こえなかった。
さて、戦場だ。
夜のOSA・Pでは正体を現した妖魔モルガがなるを追い詰める。
このときのBGM「誰かが狙われている6」、僕は名曲だと思う。
いかにも「悪の組織だぞ!怪獣だぞ!」っていうベタさがいい感じなのだ。
モルガ「
お前のママは地下室に閉じ込めてあるのさ。
お前を殺した後で一緒にあの世へ送ってやろうね。
」
なぜかママをすぐに殺さず、加えて監禁場所も教えてくれる親切なモルガ。
そこへセーラームーンが到着。
記念すべき初の「月に代わっておしおきよ」が出ました。
モルガ「
セーラームーン?
聞いたこともないわ、そんなもの!
」
だめじゃんモルガ、ちゃんと『なかよし』読まなきゃ。
モルガは店の客を操ってセーラームーンを襲わせる。
最前列にデブモブババア。
最初に飛びかかってくるのはこいつ。
逃げてばかりのセーラームーン。
いよいよ追い詰められたその時、悪を切り裂く一輪の薔薇が!
タキ「
私はタキシード仮面!
泣いているばかりでは何も解決しないぞ、セーラームーン!
」
うおー、待ってました!
これだよ、これこれ。
薔薇投げて、何か言うだけのヤツだけど、こいつがいないとやっぱ味気ないよね!
変なヤツがまたひとり増えたせいか、いよいよ大泣きするセーラームーン。
その声が、あのお団子の赤いので増幅?されてジャイアンリサイタル状態に。
色々機能多彩だな、お団子の赤いの。
このリサイタル効果でスキができたところで、ルナに促されるまま、ムーン・ティアラ・アクション。
男子としては、まんま気円斬ですわ。
モルガ撃破。
かくして平和は保たれた。
翌朝、夢かうつつかわからないセーラームーンの活躍でもちきりになる教室。
その中、疲れの取れないうさぎは、机に突っ伏していたのであった。
・・・ということで第1話終わり。
あらためて見返してみると、主要キャラの紹介のため、やたらと「忙しい」印象を受けるお話だったと思う。
ともかくも、こうしてセーラームーンはお茶の間に登場した。
それまでの少女向けアニメは、日常の中のちょっとした騒動を魔法や何やらで解決するという、現代の表現でいえば「ゆるい」展開が多かったように思う。
そんな中、夜の街で正面きってスリリングなアクションを繰り広げるセーラームーンは、当時、他とはちょっと違って、洗練された感じに見えた。
それにしても、あの古谷徹ボイスのタキシード仮面、一体正体は誰なのだろうー(棒読み)。